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続編できました(ただのコピペは内緒)

第二話 援軍参戦

レオが書簡を出して一ヶ月が過ぎようとした頃。物見の者がシホの小屋に駆け込んで来た。
「何事?」
「シホ様、王国の騎士団と思われる一団が迫っています」
「まさか、レオが手引きしたの? いやそれはないはずだよね……レオがそんなことやる訳がない……でも、やっぱり本人に聞くしかないよね」
シホは呟き、小屋を出るとレオが生活している小屋へ走った。
「レオっ、騎士団が迫ってきてるらしいんだけど、何か知らない?」
「それ誰の情報だ?」
「物見してた人から聞いた」
「ああ、それじゃあ分からないだろうな」
「どういうこと?」
「騎士団の隊には、各隊長を象徴する旗印が与えられるんだ。俺で言ったら腰に佩いている刀を交差させたようなマークだな」
 レオは理解しやすいように、自分の隊を例に挙げて説明する。
「じゃあレオは軍団旗を見たら敵か味方かすぐ判るってこと?」
「そういうことだ」
「物見台に案内した方がいいかな?」
「そうしてくれるとありがたいが、一応武器は持ってきててくれないか? 敵だとその場で一戦交えないといけないからな」
「分かった、少し待っててね」
 シホは小屋へ武器を取りに戻っていく。その後ろ姿を見ながらレオは「まさかとは思うが、密書が国王にばれたか?」と小さく呟いた。
 数分後、白の衣を身に纏い、刀を持ったシホが帰ってきた。
「待たせた?」
「いやあんまり待ってないぜ」
「こっちだよ、付いてきて」
 シホは里を囲む防壁の上に在る物見台にレオを案内する。
「レオ、双眼鏡要る?」
「貰いたい、肉眼だとまだ全然確認できないからな」
 シホは物見から双眼鏡を借りると、レオに「はい」と手渡す。レオは受け取ると双眼鏡を覗き込んだ。
「やっと来たか」
 レオは双眼鏡から目を離すと、少し安堵した声で呟く。
「レオ、質問いい? あの軍勢は敵? それとも味方?」
「味方だぜ、それも王国に大打撃を与えれるような超強力な」
「ほんとにっ」
 レオの言葉にシホも喜びを隠せないようだ。
「ああ、旗に長剣が書いてるだろ」
 レオがシホに双眼鏡を手渡す。シホはそれを覗き込んだ。
「ホントだ、あの旗って誰の隊なの?」
「ーー長」
「レオ、もう一回言って?」
「騎士団長だ」
「それって国に大打撃って言わないよね? 騎士団ベスト1とベスト2が寝返りって」
 シホは物凄く呆れた声でレオにそう言った。
「とりあえず出迎えようぜ、絶対文句は言われるだろうが」
「うん、騎士団長の噂は聞いてるんだけど、どんな人かあってみたいし」
 レオとシホは里の入り口に在る門を開け放つと、援軍を出迎えた。
「よ、意外と遅かったなハヤト」
 レオは到着早々労いよりも先に憎まれ口を叩く。だがその口調は腹を立てていると言うより、ちょっかいのように聞こえた。
「そんなこと言っていいのかなぁ? 昔の恥ずかしいことそこのお嬢さんにでも言ってもいいんだよ?」
「わかった、わかったからそれだけは勘弁してくれ……」
 一瞬にしてレオの優位は失われ、代わりにハヤトという青年が優位に立っていた。
「レオ、昔話は後にしといてそこの彼女を紹介してくれない?」
「ああ、悪いな……彼女はシホ=ガルヴァ、人狼の一族を束ねる里長だ」
 レオは私に手を向け、ハヤトと呼ばれた青年に紹介する。
「貴女が人狼の長なのですか?」
「そうだ、私が人狼の長だ、驚いたか?」
「ええ、正直なところ驚きました。人狼の一族はとても猛々しく強い一族と聞き及んでいましたから、それを束ねているのが貴女みたいな少女だとは思ってもいませんでした。おっと、名乗りが遅れて申し訳ありません。私の名はハヤト=シール」
「それはお互い様だ、レオの昔馴染みということはそれなりに若いだろ。
その年で騎士団の最高地位に居るなんて、想像もしてなかった」
 シホもハヤトも若い年齢で里長や騎士団長という最高の地位についている為か、お互いがお互いの事を驚いたようだ。
「ハヤト、援軍メンバーは十人か?」
 レオは話題を援軍のことに切り替える。
「ああ、どこかの誰かさんが行方不明になってくれたおかげで城の警備が物凄く厳重になったからねぇ」
「ま、それも予想通りだな……とりあえず国王には申し訳ないが、反逆させてもらうとしようか」
「そうだね、最近国王の政治が暴政になってきて騎士団でも手に負えない状況なんだ……」
「暴政って……住みやすい国を作るって政治が簡単に変わることなんてありえるのか?」
「国王が新しい側近を迎えたことはレオも知ってるよね?」
「それはもちろんだろ……国王直々の勅命状は部隊長各位に届けられてるんだ、側近変更を知らないわけがないだろ」
「その側近のことを僕なりに調べてみたんだ」
「何か分かったか?」
「いいや、分かったことは名前だけだよ……」
「それだけ分かるのと分からないのは大きな違いだぜ……教えてくれないか?」
「だけど……」
 ハヤトは聞かせたくないのか言葉を濁らせる。
「お前が何を考えているのか知らないが……俺は知りたいんだ」
 レオはハヤトを説得するように言葉を紡ぐ。ハヤトも折れたようで「わかった」と決意したようだ。
「まずは名前だね……奴の名はヴァルス=レイ……」
「その名前は聞いたことあるぜ……」
 ヴァルスという人物の名前が出た瞬間レオの顔も一瞬にして暗くなる。
「ちょ、ちょっと二人とも? どうしたの?」
 シホは二人の顔が暗くなったのを心配して声を掛ける。
「あまり言いたくはないが……ヴァルスは史上最悪の黒魔術師なんだ」
 ハヤトは重い口を開いた。
「奴は外道の術を使うんだ……洗脳や死者を操る術とか色々とあるけど……やっぱり一番怖いのは洗脳かな」
 ハヤトの言葉に同調するように、レオが説明を付け加える。
「洗脳は人間……いや、生物までも支配する力だ……洗脳を受けてしまえば、どんな強い能力を持っていても奴の命令に従わないといけない……」
「洗脳自体は解除可能なんだけどね……だけど洗脳解除には洗脳の術をかけた術者よりも強い能力を持つ術者が居て初めて成立するんだ……」
 レオとハヤトは洗脳の恐怖を口で説明する。
「それじゃあ、どうすればいいの……」
 シホは不安そうな声音でレオとハヤトに訊く。
「まぁ落ち着けよ、誰も方法は無いなんていってないぜ」
 レオは少し落ち着いた様子でシホの不安を拭うように話し始める。
「洗脳は術者を倒しても解けるんだ」
「だから、国を元に戻すためにも、ヴァルスを絶対に倒さないといけない……」
 ハヤトもレオもさっきまでの不安そうな顔を一気に切り替え、軍人の顔つきになる。
「シホさん、申し訳ないですけど里に案内してくれませんか? 強行軍で進んできたので、隊員達の体調が心配ですから」
 ハヤトはシホに里へ案内するように頼む。
「ああ、分かった。何も無い所だがゆっくりしてくれ」
 シホは踵を返すとハヤトと隊員達を里の中へ案内した。
「レオ、後で話が在る」
 ハヤトはレオの隣を通り過ぎる瞬間に小声でそう囁く。レオも理解したようで「分かった」と小さな声で返す。
 ハヤトが里に入って数刻後ーーこれからの話し合いをするため、レオとハヤトはシホの小屋に集まっていた。
「レオ、国王軍が進軍してくるまでにどれくらい期間が在ると思う?」
 ハヤトはレオに問う。
「そうだな……大体の見積もりだと三ヶ月から四ヶ月だな」
 レオはすぐに答える。
「もう少し早く進軍して来るとは仮定できない?」
「仮定するとしたら最悪一ヶ月から二ヶ月だな……」
「一ヶ月の間に軍備の強化と練兵……これは結構厳しいね」
 ハヤトはレオの見積もりを聞いて大まかなスケジュールを考え出したようだ。
「ハヤト、お前厳しいって言ってもあの練兵内容なら一ヶ月は余裕だろ? 人狼の奴らが可哀想だぜ」
 レオは苦笑しながらハヤトに声を掛ける。
「レオ、何でそんなこと言ってるの?」
 シホはレオが何故苦笑を浮かべているの知りたかったのか、レオに問いかけた。
「シホ、何で俺が騎士団の中で二番目に強いって言われてたか知ってるか?」
「いや、知らない……」
「なら、教える必要が在りそうだ……それで多分俺が苦笑した理由まで繋がると思うからな」
 レオは一拍間を空け語りだす。
「俺とハヤトは幼なじみでな……騎士団見習いの頃に二人でトレーニングしてたんだ、だけどな……ハヤトの考えたトレーニングメニューが半端なくきつかったんだよ。騎士団学校のグラウンド三十周だろ、素振り千本だろ、腕立て伏せ百回だろ……上げたらキリねぇなこれ。今思えば俺よくあんなメニューこなしてたな……」
 レオは遠い昔を懐かしむような目で宙を見上げた。
「でも、それ途中で止めれなかったの?」
 シホはレオに訊いた。
「シホ、俺一回だけトレーニングさぼったことが在るんだ……」
 そういうレオの口調はさっきと打って変わって物凄く覇気の無い声だった。
「どうしたの?」
シホはレオの様子の変化に気がつく。
「シホ、これ言ったら多分絶対に引くと思うから言いたくないんだ……」
 レオは覇気の無い声のままそう言った。
「引かない、引かないから何があったか教えて?」
 シホは逆に興味を持ったようだ。レオも諦めたのか「仕方ない……絶対に引くなよ」と釘を刺し、話し始める。
「ハヤトの奴、サボった次の日から一週間くらいトレーニングのメニュー三倍に増やしやがったんだ……それ以来アイツのトレーニングは一回もサボった事は無かったな……」
「レオ……ごめん。流石に引く」
 シホは聞きおわった後にレオをバッサリと切り捨てる一言を放つ。レオはその言葉を聴くと「アハハハ」と乾いた笑い声を上げたあとガックリとうなだれる。
「シホ、レオをいじめてあげるのもほどほどにしときなよ」
 ハヤトはシホとレオのやり取りを見ていたらしく、物凄い恍惚の笑みを浮かべていた。
「レオ、燃え尽きるのもそろそろ止めにして、さっきの話の続きをするよ……立ち直れないっていうなら、人狼の人より十倍くらいのメニューこなしてもらうけど?」
「ひぃぃぃぃ、そ……それだけは勘弁してくれぇぇぇ」
 レオは悲鳴を上げながら物凄い勢いで顔を振り上げる。
「じゃあさっきの続きから、一ヶ月の間に練兵と軍備の強化をするには時間が足りなすぎるけど、軍備の方はレオの隊で何とかできるよね?」
 ハヤトは何か訳ありげにレオに問いかける。
「一ヶ月か……」
 レオはうつむいて少し考え込むが、すぐに顔を上げ「一ヶ月くらいなら何とかなるだろ」と言い切る。
「流石に決断が早いねレオ」
「うっせぇよ、俺の隊の内情をよくそこまで把握してたなお前」
「それも騎士団長の務めだよ、甘く見ないで欲しいね」
「流石に騎士団長様は違うねぇ」
「それは褒め言葉と受け取っとくよ」
 レオとハヤトは「ははは」と笑った。
「さて、レオと僕のやることは決まったから次はシホさんのやることだね」
 ハヤトはシホの方を向き話題を次へ進める。
「シホさんのやることは二つ。まずは人狼の猛者を招集すること、次にレオの隊を山岳地帯に在る鉱山に案内することかな」
「ハヤト、猛者を招集することは分かったんだけど何で鉱山が関係あるの?」
 シホはふと疑問に思ったことを質問する。
「えっとね、レオの隊の隊員達は大半が炭鉱夫だったり鍛冶屋だったり、言ったら悪いけど貴族が多い騎士団の中では珍しい隊なんだよね。まぁ僕の隊も言えたことじゃ無いんだけど」
「要するに、俺の隊の奴らに任せておいたら一ヶ月で軍備は完璧に揃えれるってことだ」
 レオがハヤトの言葉を要約してシホに伝える。シホも納得したようだ。
「じゃあ、すぐに召集かけてくるね」
 シホはそういうと小屋から出ていく。
「これからの戦いが俺達の命運を分けていくんだよな……」
 レオは小さく呟く。
「レオ……やるからには絶対に勝つよ。ヴァルスの好き勝手にはやらせない」
 レオの呟きが聞こえたのか、ハヤトも自分の決意をレオに伝え二人は顔を見合わせ頷いた。

第三話 天獄? 地獄? 恐怖の強化訓練

「ハヤト、レオ、皆集めてきたよ」
 数刻後シホが猛者たちを集めて帰ってくる。
「シホさんありがと。次はレオの隊の皆を鉱山に案内してあげて」
「分かった」
 シホはそういうとレオの隊を率いて山岳地帯に在る鉱山へ赴いていく。
「さて、残った皆は早速練兵をはじめるよ。まずは僕とレオを隊長とした簡易小隊を組むからね」
「分かれ方だが、俺が持ってる箱の中にレオと書いた紙とハヤトと書いた紙が入ってある。それぞれ一枚ずつ引いて、名前が書いてある隊に行ってくれ。」
 レオはそういうと、人狼の猛者たち一人一人をまわり紙を引かせる。
 数分後にはレオとハヤトの簡易小隊が完成していた。
「じゃあ早速練兵内容を伝えるね……とりあえず最初は両小隊とも里の中を三十周位して貰おうかな、流石にレオと訓練してた時みたいにしたら皆すぐに音を上げちゃうから、最初は十周するのを三本で許してあげる」
 ハヤトは物凄い笑みを浮かべてとんでもない内容を言いあげる。これには流石の人狼族の猛者たちも悲鳴を上げるがその隣ではレオだけが苦笑を浮かべていた。
「流石ハヤト相変わらずの鬼畜内容だな……」
「レオ、何か言ったかい?」
「いやいや、何も言ってないぜ(危ねぇ、もうちょっとで人狼の猛者達よりきつい訓練をさせられてたぜ)」
「仕方ないなぁ、レオそんなに訓練したかったのかぁ、じゃあレオだけ特別な内容だねっ」
「ちょ、ちょっと待てハヤト、何でいきなりそうなるんだっ」
「いや、一人だけ訓練できないでウズウズしてるんじゃないかなって思ったからさ」
「お前なぁ……一応聞くがやらないと言ったら?」
「もちろん昔みたいに三倍だよ?」
「だよな……」
 レオは一瞬だけ嫌そうな顔をするが、ハヤトに悟られれば酷い目に会うことを理解している為、即座に真剣な表情に戻す。
「じゃあレオは、里の中を三十周を三本やって貰おうかな」
「ハヤト、一つ言っていいか? 俺に死ねと?」
「そんなはず無いよ? レオならきっとやってくれるからね」
「うっ……そこまでお見通しかよ」
「何年間一緒に訓練したと思ってるのさ」
「まぁそうか」
 レオとハヤトはお互いに微笑みあう。
「皆、準備はいい?」
 レオとの訓練内容の話を切り上げると、ハヤトは長剣を鞘から抜き放ち「じゃあ、僕がこの剣を振り下ろしたらスタートしてね」と一声掛けると、瞳を閉じる。
「よーい……スタートッ」
 ヒュンと刃が風を切る音が辺りに響き渡ると同時に、レオと人狼の猛者達が一斉に駆け出す。端から見たら、一匹の獲物に対して複数の狼が群がっているようにも見える。
「レオも皆も頑張るなぁ、僕も次を考えないとね」
 ハヤトは一人、次の訓練内容を練り始めた。

 ――三時間後
「ハーッ、ハーッ、ハーッ」
「お疲れ、レオ」
 息切れして帰ってきたレオにハヤトは労いの言葉を掛ける。
「ハァッ、お疲れ……じゃねぇよ……マジ…死ぬかと思ったぞ」
「でも皆が十周する間にレオは三十周走ったんだよね?」
「あたりまえだろ……と、とりあえず水をくれ」
「はい、ってあれ?」
「どうしたんだ? ハヤト」
 表情を曇らせたハヤトにレオは理由を聞く。
「いや、あの、水忘れたみたい」
「な……なん、だと」
「レオ、その返しは古いと思うんだけど」
「うっせぇよ、水忘れといてそれは無いだろ」
「ごめんって、でも今からお昼の休憩入れるから、そのときでもいいでしょ?」
「ああ、とりあえず水分補給できるならな」
「じゃあ、号令掛けとくね」
 ハヤトは微笑むと振り返り「今から一時間ほど休憩入れるからそれまでに昼食や仮眠とか取っといてよ、昼からの方が厳しいから、覚悟しておくように」と全体に号令をかける。
人狼の猛者達は「やっと終わった」、「昼からこれよりきつくなるのか」と言いながら解散していく。
「レオも休んどいてね? お昼からのメニューも他の人の三倍はこなして貰うから」
「うげ、マジかよ……お前それ俺に死ねといってるようなもんだぜ」
「きっとレオなら出来ると信じてるよ?」
「いやいやいや、何で疑問系にしたんだよ」
「え? だってレオだから」
「意味が分からないぜ、分かりやすいように説明してくれ」
「え、やだ、めんどくさい」
「おい、そこの駄目騎士団長」
「ほぉー、レオの口からそんな単語が出てくるとはねぇ……お昼からの訓練、レオだけ他より十倍して貰おうかな、腹立つし」
「ハヤト、一つ聞きたいんだが……昼からどんなことする気なんだ?」
「えーと、とりあえず基礎からだからお昼からも走ってもらうつもりだよ? 午前中は十周だったけど、午後からは二十周してもらう予定」
「つまり、昼から十倍の訓練ってことは……俺だけ三百周走れってことか?」
「そうなるね、流石に僕も鬼じゃないから一時間で十分は休憩させてあげるよ。それでも三時間で三百周はしてもらうけどね」
ハヤトは無邪気な笑みを浮かべる。レオもそれにはため息をつくばかりだった。
「とりあえず昼行こうぜ……腹減りすぎて動けねぇ」
そう言うとレオは立ち上がりハヤトに手を差し伸べ、ハヤトもその手を取り立ち上がる。
「そだね、シホさんがお昼作ってくれてたらいいけど……作ってくれてなかったらレオ炊事よろしくね」
 ハヤトはレオに向かって満面の笑みを浮かべてそう言い放つ。
「お前なぁ、普通なら疲労が溜まってる奴に向かって炊事を頼まないよな? というか……お前まだ炊事自分で出来ないのかよ、前に一回教えたはずだよな」
「いやだって……めんどくさいし、騎士団だったら食堂があるからそこで済ませれるしね」
 ハヤトは自分が炊事を出来ないことを「めんどくさい」の一言で片付けるのに慣れているらしく、レオの言葉攻めも意味を成さないようだ。
「とりあえず、小屋に帰ろうか」
「おう……なんか不完全燃焼だけどな」
 レオとハヤトは二人揃って小屋へと歩き出す。

「おかえりー、だいぶボロボロだねぇ……特にレオが」
シホはお昼を作ったままの格好でレオ達を迎え入れる。シホは白の衣にピンクの生地に白い水玉をあしらったエプロン着ており、身なりからして良く似合っている。
「ただいま帰ったぜ……ハヤトの奴相変わらず鬼畜訓練で死ぬかと思った」
「僕の訓練をきっちりとこなすのが律儀なレオらしいよね」
 ボロボロのレオをハヤトが弄りながら小屋の中に入る。
「とりあえず、ご飯できてるから先に食べよう。配膳は済ませてるからテーブルに着いてね」
 シホはそういうとテーブルに招く、テーブルの上には肉のミートソース煮や野菜サラダ、色とりどりのドレッシング等が並び質素だがどこと無く豪勢な雰囲気を醸し出している。
「おう、腹減りすぎて死ぬところだったぜ」
「レオ、とりあえずがっついたらかっこ悪いからね?」
「わかってるよ……」
レオが食べるのを静止するようにハヤトが口で釘を刺す。レオもそれをおとなしく聞き入れシホがテーブルに着くのを待った。
「それじゃ、いただきます」
「「いただきます」」
 シホの合唱に続いてレオとハヤトも合唱する。
「で、朝はどんな訓練をしたの?」
 食事中唐突にシホがそんな話題を振る。
「朝は、里の中を十周×三本してもらってたんだ、ちなみにどこかの誰かさんは三十周×三本だったけどね」
 ハヤトはレオをちらりと見て、シホの問いに答える。
「ウチの里の子達にも容赦してないねハヤト……」
シホは里の猛者たち同情するような声でハヤトに言った。
「それは褒め言葉として受け取るよ」
 ハヤトは満更でもないらしい。少し頭を掻きながらそう言った。
「俺は好きで三十周×三本した訳じゃないからな……」
 ハヤトがシホの問いに答えた直ぐ横でレオはボソッと呟く。
「レオなんか言った?」
「いだだだだだ、耳を引っ張るな耳をっ」
 レオがボソッと呟いたのが聞こえたのかハヤトはレオの耳をものすごい力を込めて引っ張る。おかげでレオはものすごい涙を浮かべていた。
「お前なぁ、いつも人の耳を引っ張るってのはどういう了見だ」
「いや、だってレオの耳って結構掴みやすいから引っ張りやすいのに」
 レオは狼の如くハヤトに対しガルルルと牙を向くが、ハヤトは気にせずにあしらう。
「それはそうと、食べないと冷えておいしくなくなっちゃうよ?」
 シホは二人を制するように言葉を発する。それには流石の二人も反論できるわけもなく、借りてきた犬のようにおとなしくなる。
「それじゃあ、食べるときだけはゆっくり食べよう? ね?」
「「は、はい……」」
シホの有無を言わせない静かな声にレオとハヤトはすごすごと引き下がる。そんな二人の様子を見てシホは満足げに頷く。この時初めて屈強な戦士たちをシホが何故纏め上げることが出来たのかをハヤトとレオは理解した。 
「じゃあ、もう一回いただきます」
「「い、いただき……ます」」
 再度合唱を行い、三人は料理に手をつける。 
「相変わらず、この野菜サラダうめぇ」
「このミートソース煮も絶妙な味付けで美味しいよ」
「ホントっ、よかったぁ……そのお肉も野菜も全部里で採れたものだから、レオは気に入ってくれてるのは知ってるけど、ハヤトが気に入ってくれるか心配だったから」
「俺が気に入ったものをハヤトが気に入らないわけないだろ? 俺とハヤトは生まれも育ちも同じ村だったんだからな」
 シホは、ハヤトが里で採れた食材を気に入らなかったらどうしよう、と言う心配が合ったようで、ハヤトの口から美味しいの一言が出た途端、顔を輝かせ満面の笑みを浮かべ、それを見たレオは横からチャチャを入れる。
「でも、少しレオが恨めしいかなぁ……騎士団を離れて一ヶ月の間こんな美味しい素材で作られた料理を食べてたなんて……騎士団の食堂で出てくる料理なんてただの精進料理だから、味気も無いし、これといって美味しいものもなかったしね」
 ハヤトはレオが騎士団を抜けた後一ヶ月の間のことを思い出し、口に騎士団食堂への不満とレオへの愚痴を漏らす。その隙にレオがハヤトの皿からミートソース煮を「ハヤト、食わないんだったらそれ食ってやるよ」と言って攫っていく。それに腹を立てたハヤトは、「馬鹿っ、僕が肉を最後に残しといて白米と一緒に食べるのが好きなことはレオも知ってるでしょ、食べ物の恨みは恐ろしいということを思い知らせてあげる」と武器を抜き放つ。
 二人が食卓を挟んで武器を抜き放ち構え一触即発の状態が続き、そのままお互いに切り掛かろうとしたときだった……パァンという乾いた音と共に、レオとハヤトが同時に吹き飛び壁に激突する。一瞬のことだったので二人とも目を丸くして自分たちに平手打ちをしたであろう人物を見る。
「ねぇ? さっきも言ったよね? 食事中くらい静かに食べよう? って……私との約束を守れないんなら、この里の奥地にある帰らずの森林に武器とか身ぐるみ無しで放り込んであげようか? ウフフ」
 シホは物凄く凄みを浮かべたドス黒い笑みで二人を見下ろす。
「「す、すみませんでした」」
 いくら数々の戦場を潜り抜けてきた二人とは言え、身ぐるみを剥がれて帰らずの森林に放り込まれては生きて帰れないということを悟ったのか、おとなしく武器を収め食卓へと戻る。
「やっぱ二人とも物分りが良くて助かるよ」
 その後「エヘヘ」と満面の笑みを浮かべ食卓に戻るシホと「絶対にシホに歯向かわないようにしよう」と決意を固め食卓でおとなしくしている騎士団上位二名という奇妙な構図になった。その後は何事も無く食事が終わり、つかの間の休憩時間となる。

――その三十分後
「皆、お昼はゆっくり出来たかな? それじゃあ午後の訓練を始めるよ、ちなみに内容は午前中と同じだけど訓練量は二倍、つまり里の中を二十周を三本やってもらうからね、例に挙げたら悪いけど、レオには午前中の十倍つまり百周は走ってもらうから、皆負けないようにね」
再び広場に集まった面々に対しハヤトが指示を出す。その指示に対し人狼の猛者たちは「午前の二倍とは、俺たちを殺す気か」や「もう走りたくないよパパン」等様々な呟きが出る。
「走りたくないんだったら、休んで良いよ? その代わり、今日レオの倍……つまり二十倍の訓練をするならね」
 ハヤトは物凄く眩しいくらいの笑みを浮かべ、さらりと物凄い無理難題を言い放つ。それには「走りたくない」といっていた者たちは青ざめ「午後から地道に頑張ったほうが地獄を見るにしてもまだマシだ……」と言い始める。
「それじゃあ皆覚悟が決まったみたいだね、じゃあスタートいくよ……」
 ハヤトは鞘から武器を抜き放つと上段に構える。直後ヒュンと言う風を切る音が鳴り響くと同時に地を蹴る足音が鳴り響く。
「さすがに脅しすぎたかなぁ、まぁきっと皆だったら何とかなるよね?」
 黒く遠ざかっていく皆を見つつハヤトは一人、風にかき消されるほど小さな声で呟いた。
――数刻後
「こ……これ……で半分……だ」
 今にも死にそうな声を出しながらレオがスタート地点に戻ってくる。人狼の猛者達は未だ二十周と半分つまり三十周くらいしか走っていないのに対し、レオは三百周の半分つまり百五十周を走った計算になる。これは凄まじいスピードだった。
「お帰りー、そろそろ水分補給しないと脱水症状で死んじゃうよ?」
「あ、あ……そう……だな」
「無茶もほどほどにしておきなよ?」
「どこの……誰、だよ……無茶させるようなもの、考えたのは……」
 ハヤトはレオの身を案じながら水の入ったボトルをレオに手渡す。レオは愚痴を零しながらもボトルを受け取り、中に入っている水を一気に喉の奥へ流し込む。
「ふぅ、生き返ったぜ……」
「レオ、多分これ僕だけが思ったことじゃないんだけど……さっきまで死に掛けてた人がたった一リットルの水だけでそこまで復活するのはどうかと思うよ? というかレオの身体がどうなってるのか物凄く不思議に思えるよ……」
「なんだよ……流石に干乾びかけてた人間に少しでも水分与えれば普通は息を吹き返すだろ? それと同じ原理だ」
「いや、それでも普通は二リットルくらい飲まないときつくない?」
「そんなのは俗に言う『個人差があります』で全て片付けれるだろ……とりあえず残り半分全力で駆けてくるぜ」
 そう言って、レオは脚部に力を溜め込むと大地を蹴り駆け出す。レオが全力を出して駆け出したためか、辺り一面には砂塵が舞っていた。
「さっきレオが『個人差があります』で全て片付くとは言っていたけど……レオのあの体質って普通なら個人差で片付かないものだよね……」
 ハヤトは遠くで舞い上がる砂埃を眺めながら一人疑問を呟いてみる。どこからかレオの「気にしたら負けだぜ」という言葉が聞こえたような気がした。
ーー更に数刻後
 スタート地点に、ぼろぼろになった人狼の猛者達と、またも死に掛けているレオの姿があった。
「皆お疲れ様、とりあえず今日はここまでだよ」
 ハヤトのこの号令は、ぼろぼろになった人狼の猛者たちを元気付けるには良い一言だったらしく、さっきまで死にかけてた猛者達は一瞬にして元気を取り戻したかに見えたが「ふーん、まだ余裕がありそうだね?」と言うハヤトの一言が余りにも冷たいものを含んでいた為か、元気だった猛者達は一瞬にして沈み込んだ。
「とりあえず基礎体力を付けてもらうから、明日の朝も同じようにやるからね、覚悟しておくように……それじゃ、解散っ」
 解散の一声と共に、猛者たちはそれぞれ散り散りになって帰っていく。あるものは家で帰りを待つ妻や子供の下へ、またあるものは里にある酒場へ、そしてまた在るものは本来の仕事をしに戻り……さっきまでの緊迫した空気ではなく、いつもの穏やかな里の空気へ自然と戻っていた。
「レオ、初日の手ごたえはどうだった?」
 ハヤトは、猛者たちと共に訓練をしていたレオに話しかける。
「そうだな……初日としては上々だと思うが……皆、何の為の基礎体力かは理解できてないだろうな」
 レオは率直な意見をハヤトに述べる。
「まあ、今に判るようになるよ……きっと」
「そうだな……あと一か月で防衛力の強化と戦闘能力の強化……課題は山積みだが」
 レオはフッと笑って天を仰ぎ「なんとかなるだろ」と言い、ハヤトも「そうだね」と言う。二人が眺めていた空は夕焼けで赤く染まり、黒い大きな鳥が3羽ほど飛んでいくのが見えた。

追記コメ返
よっぴ

即興文章につき過度な期待は厳禁です
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[ 2013/09/22 21:21 ] 雑記+その他 | TB(0) | CM(0)

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